「一生懸命チラシを作ってポスティングしたのに、問い合わせの電話が鳴らない…」
ポスティングをご担当されている方の中には、こうした悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もしかするとその原因はチラシで伝える「情報の順番」にあるのかもしれません。
デザインや色使いも大切ですが、それ以上に
「何を」 「どの順番で」
伝えるかが、チラシを手に取った読者の行動を大きく左右します。
この記事では、セールスライティングの強力な型「新PASONA(パソナ)の法則」について、その基本からポスティングチラシへの具体的な応用方法を解説します。
この法則を知れば、単なる情報の羅列ではない、読者の心理的な流れに沿った「響くチラシ」を作るためのヒントになると思います。
読者の心を動かす「新PASONAの法則」とは?基本から徹底解説
新PASONAの法則とは、そもそも何?
「新PASONA(パソナ)の法則」という言葉を、今回初めて聞いたという方も多いかもしれません。
これは、セールスライティング(商品やサービスを売るための文章術)における、非常に有名で強力な「フレームワーク」の一つです。
「人の心を動かし、最終的に行動してもらうための、”情報の伝え方(順番)”」であり難しく考える必要はありません。
この型は、ポスティングのチラシだけでなく、企業のウェブサイト、メールマガジン、営業担当者のセールストークなど、人を動かすことが求められる様々な場面で活用されています。
なぜこの順番?人の「買いたい」を生み出す心理ステップ
このPASONAの法則は、日本の著名な経営コンサルタントである神田昌典(かんだ まさのり)氏によって、1999年に提唱されました。
人が何かを購入したり、行動を起こしたりする際には、無意識のうちに特定の心理的なステップを踏んでいると言われています。
提唱当初の「PASONAの法則」は、以下のステップで構成されていました。
- Problem(問題提起)
- Agitation(煽り)
- Solution(解決策)
- Narrow down(絞り込み)
- Action(行動)
これは、問題点を指摘し、それを放置する不安を「煽る(Agitation)」ことで、読者の行動を強く促す手法でした。
このPASONAの法則は現在でも使用されています。
しかし、製品やサービスなどによっては過剰な煽りがそぐわないケースもあり、時代の変化に合わせて「新PASONAの法則」として最適化されていきました。
「新PASONAの法則」では、ステップが以下のように変更されました。
- Problem(問題提起)
- Affinity(親近感)
- Solution(解決策)
- Offer(特典)
- Narrow down(絞り込み)
- Action(行動)
最大の違いは、「A」が「Agitation(煽り)」から「Affinity(親近感)」に変わった点です。
読者を無理に追い込むのではなく、同じ目線で寄り添い、共感することで信頼関係を築くスタイルが、現代の消費者には適しているのです。
この「悩み」→「共感」→「解決」→「特典」→「絞り込み」→「行動」という流れこそが、読者のごく自然な心の流れに沿って、スムーズに行動を促すことができる理由です。
新PASONAの法則を構成する「6つの要素」を詳しく解説

新PASONAの法則は、以下の6つの英単語の頭文字から成り立っています。それぞれの要素がどのような役割を持っているのか、詳しく見ていきましょう。
P (Problem) – 問題:読者が抱える悩みや欲求を明確にする
最初のステップは、読者が潜在的に抱えている悩みや、まだ気づいていない問題を具体的に示すことです。ここで「あ、これは私のことだ」と自分事として捉えてもらうことが非常に重要です。
A (Affinity) – 親近感:悩みへの共感や同じ目線を示す
提示した問題に対して、「わかります、大変ですよね」「そういうこと、ありますよね」と寄り添い、共感を示すステップです。読者との心理的な距離を縮め、「この人は自分のことをわかってくれる」という信頼感の土台を築きます。
S (Solution) – 解決策:問題を解決できる具体的な方法を提示する
読者との間に共感が生まれたところで、「その悩み、実はこうすれば解決できますよ」と、具体的な解決策を提示します。ここで初めて、あなたの商品やサービスが登場します。
O (Offer) – 特典:商品・サービスの魅力的な内容(特典、価格など)
解決策(商品・サービス)を導入してもらうための、具体的な取引条件を提示します。「今ならこんな特典があります」「価格はこれだけお得です」といった、読者にとって魅力的なオファー(特典)を行います。
N (Narrow down) – 絞り込み:「今だけ」「あなただけ」の限定性・緊急性を伝える
魅力的な提案をしても、「まあ、いつでもいいや」と思われてしまうと、行動にはつながりません。「先着〇名様」「〇月〇日まで」「このチラシをご覧の方限定」といった限定性を加え、今すぐ行動すべき理由を作ります。
A (Action) – 行動:読者が次に何をすべきか具体的に示す
最後のステップです。読者が「じゃあ、どうすればいいの?」と迷わないよう、次に取るべき行動を明確に、かつ具体的に指示します。「今すぐお電話ください」「このクーポンを持参してください」「詳しくはWebで検索」など、ゴールへと導きます。
【実践】ポスティングチラシで新PASONAの法則を使う6ステップと具体例

チラシ作成で陥りがちな罠:「スペック」や「見た目」だけを伝えていませんか?
新PASONAの法則の具体的なステップを見る前に、多くのマーケティング担当者や店舗オーナー様が陥りがちな失敗について触れておきます。
それは、自社が伝えたい「機能」や「スペック」ばかりをチラシに並べてしまうことです。
例えば、「高性能〇〇搭載!」「地域最安値!」「他社比〇%アップ!」といった、売り手側のアピールポイントだけを前面に出しても、多くの場合、読者には響きません。
読者が本当に知りたいのは「スペックの羅列」ではなく、「その商品やサービスが、自分のどんな悩みを解決してくれるのか?」という点だからです。
チラシの見た目のインパクトや色使いはもちろん大切ですが、それ以上に「読者の購買行動に繋がるメッセージ」を、「読者の心に響く順番」で伝えることが何よりも重要なのです。
私たちが多くのチラシを見てきた中で感じるのは、まさにこの「スペック訴求」に対する誤解です。
例えば、ある学習塾の方が持ち込まれたチラシで「〇〇大卒ベテラン講師陣在籍!」「最新AI教材導入!」と大きく書かれているものがありました。これらは素晴らしい強みですが、ポスティングの反響は残念ながら今ひとつでした。
そこで新PASONAの法則に基づき、伝える順番をガラッと変えるチラシ内容のご提案をしました。
「学校の授業についていけず、お子様の将来が不安ではありませんか?」
「その気持ち、よくわかります。うちもそうでした」
と、問題提起と共感をチラシの上部に訴求しました。さらにチラシの下部には
「当塾の『寄り添い型』指導なら、お子様がつまずいた所まで戻って苦手を克服できます」
と解決策を提示してチラシ1枚にメッセージ性を持たせた構成へ変えたのです。
さらに裏面には解決策の補強と絞り込みの部分を強化して、提案と行動を促す部分は両面に追加しました。
伝える内容は同じでも、スタート地点を読者の「悩み」に変えるだけで、チラシは「広告」から「自分ごと」として読まれるようになり、結果として問い合わせが増加した事例があります。
では、具体的に新PASONAの法則をポスティングチラシにどう落とし込むのか、ステップで見ていきましょう。
ステップ1:P (Problem) – 問題(課題提示)
チラシを手に取った瞬間に「私のことだ」と思わせるキャッチコピーが鍵です。読者が日頃感じている、あるいは気づいていない悩みを具体的に言葉にします。
- 「うちの子、勉強についていけてる?と不安になったことはありませんか?」
- 「今夜の献立、考えるのが面倒…と思っていませんか?」
- 「一日中、スマートフォンやパソコンを使っていませんか?」
ステップ2:A (Affinity) – 親近感(共感)
ステップ1で提示した問題に、優しく寄り添います。想像される現状を示しながら「そうそう、そうなのよ」と読者に頷いてもらうことを目指します。
- 「毎日忙しい中で、子どもの勉強まで見るのは本当に大変ですよね。ゲームばかりしている姿を見ると、ついイライラしてしまう…その気持ち、わかります。」
- 「仕事や家事でクタクタな日に、そこから料理…。たまにはゆっくりしたいと思うのは当然のことです。」
- 「日々のコミュニケーションやお仕事などでどうしても使わなくちゃいけない電子機器たち、目や姿勢など体に負担になっているとわかっていながらも使わないことは現代社会では難しいですよね。」
ステップ3:S (Solution) – 解決策(明確な解決)
ここで初めて、あなたの商品・サービスが「解決策」として登場します。「その悩み、私たちが解決できます」と具体的に宣言します。
自社が伝えたい「機能」や「スペック」などの強みはここでしっかりと訴求します。
- 「当塾の『個別カリキュラム』なら、お子様がつまずいた根本的な原因まで戻って、わかるまで徹底的に指導します。」
- 「当店の日替わり宅配弁当なら栄養管理士が監修した健康的な食事が好きなタイミングでご自宅に届きます。」
- 「このサプリメントを飲むことで目の疲労感を抑え、かすみやぼやけを緩和して見る疲労感を軽減します。」
ステップ4:O (Offer) – 特典(魅力的なオファー)
解決策を受け取るための、具体的な特典です。価格や特典、サービス内容など、読者が「それなら試してみようかな」と思える魅力的な条件や利用までのハードルの低さを提示します。
- 「まずは無料体験授業(90分)で、お子様が『わかった!』と笑顔になる瞬間を体験してみてください。」
- 「糖質が1日○g、塩分が1日○gまで抑えられておりあなたの体調管理もサポート!」
- 継続プランがお得!2回目以降は○%OFFになる定期コースもあります。
ステップ5:N (Narrow down) – 絞り込み(限定性)
行動を後回しにさせないための「ひと押し」です。対象者や期間を絞り込むことで、「迷っているなら今すぐ行動すべき」という理由が生まれます。
- 「このチラシをご覧の〇〇地区の方限定。10月末までのお申し込みで、入塾金(通常2万円)を全額免除いたします!」
- 「このクーポン限定で、初回〇〇円OFF!」
- 「今なら購入者全員に〇〇をプレゼント!」
ステップ6:A (Action) – 行動(具体的な誘導)
読者が次に何をすべきか、明確に、大きく、わかりやすく示します。
迷わせないことが鉄則です。
- 「無料体験は、今すぐお電話ください! [電話番号 00-0000-0000]」
- 「ご注文はお電話で! [電話番号 00-0000-0000] (Web予約はこちら→)」
- 「定期だけでなく単品購入も可能!こちらから2分でお申込み可能です(バナー)」
新PASONAの法則をポスティングで使う際の注意点と成功のコツ
新PASONAの法則は強力ですが、ポスティングで使う際にはいくつか注意点があります。
注意点1:F型N型Z型の視線誘導を意識する

チラシだけでなくwebサイトなどのデザインされたものを見る際、レイアウトには基本パターンが存在します。
F型・・・webサイトなどに多い
N型・・・縦書きの雑誌やパンフレットに多い
Z型・・・横書きの雑誌やパンフレットなどに多い
新PASONAの法則は読者にストーリー性を持ってもらう性質上、このようなレイアウトに沿った新PASONAの配置になるよう気を付ける必要があります。
注意点2:情報を詰め込みすぎず、デザインとのバランスを取る
新PASONAの法則に従って6要素すべてを盛り込もうとすると、文字だらけの情報過多なチラシになりがちです。ポスティングチラシは、ウェブサイトと違って紙面が限られています。すべての要素を長文で書くのではなく、キャッチコピーや短い文章、写真やイラストなどを効果的に使い、テンポよく配置するデザイン力が求められます。
注意点3:ポスティング特有の「一瞬の判断」を意識する
ポストから取り出されたチラシは、わずか3秒で「読む」か「捨てる」かの判断がなされます。特に最初の「P (Problem)」がターゲットの心に刺さらなければ、その先(A, S, O…)を読んでもらうことができず御社が最も伝えたい「強み」まで届かない恐れがあるのです。そのため、新PASONAの法則の中でも、特に「P」にあたるキャッチコピーの重要性が非常に高いと言えます。
反響率をさらに高める2つの追加要素:「証拠(Evidence)」と「お客様の声(User Voice)」

新PASONAの法則をさらに強力にするために、ぜひ追加したい補強要素があります。
一つは「Evidence(証拠・根拠)」です。例えば、「満足度95%」「合格実績〇名」「販売数1万食突破」といった客観的なデータや実績は、提案の信頼性を高めます。
もう一つは「User Voice(お客様の声)」です。実際にサービスを利用した人の具体的な感想や笑顔の写真は、何よりの信頼材料となります。
これらを「S (解決策)」や「O (特典)」の部分に添えることで、あなたの提案の説得力は格段にアップします。
まとめ
今回は、ポスティングの反響率を高めるための強力なフレームワーク「新PASONAの法則」について、その基本から具体的なチラシへの応用方法までを解説しました。
これまで「スペック」や「機能」ばかりをアピールするチラシを作りがちだった方は、ぜひ次のポスティングから、この新PASONAの法則を意識してみてください。






